TwilightSmile

 ~ 定年 another story ~

40歳転職 ①

マイホームの購入資金は今では考えられないローンでした。当時の住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)のステップというローンで、当初5年、10年間は返済金額を抑え、その分を5年、10年後に上乗せして支払うというものでした。
サラリーマンの給料は上がって行くもの。終身雇用と定期昇給を前提とした今の世ではあり得ない常識が当たり前だった。
そんな世に私はいたのです。

西暦2000年になったころ、繊維業界は廉価な人件費の東南アジア諸国に生産拠点が移り構造不況、畢竟、私の勤めていた会社は受注売上とも落ち込み、にっちもさっちもいかなくなりました。

ある日、会社の役員が社員を集めて苦渋の表情で話されました。

「夏のボーナスは0」

会社の苦境はわかってはいたけれど衝撃的な宣告でした。

40歳で、家族4人、家のローンを抱えて、年収300まん。
そしてボーナス0。

ボーナス併用の住宅ローンです。
貯金は頭金で叩いていました。

お世話になった会社です。
妻と出逢った会社です。
仲人さんはこの会社の常務さんです。
結婚式には会社の人がほとんど出席してくださって、
祝ってくださって、社長さん以下専務常務部長課長同僚みないい人ばかりで、
大好きな人たち、お世話になった人たち、私を育ててくださった人たち。
みなで頑張って会社を何とかしたい。
みなと共に最後まで頑張らなきゃ。
みなを裏切れない。
がんばらなきゃ。


・・

私は、がんばった。
できるところまではがんばった。

でも。

私は転職を決意したのです。
家族を守るために。

私は稼がねばならない。