時は流れ私は50を数えました。
私は多くのことを学びました。
学ぶ、というよりは、学ばなければ職責を果たせない立場にあったこと、それが私を学ばせたのだと言えます。
私の転職した会社は不動産の有効活用を提案する建築会社でした。
そして私はマネージャーとして営業所長として受注予算を持ち部下を抱える立場でした。知らない、分からない、ということは、立場上お客様の信頼を失いますし、部下の教育も儘なりません。
そのため、私は知らないこと分からないことは必死に学びました。
学ぶことは多岐にわたりました。建築についてはもちろんのこと、土地・建物に関する税務・法律等、毎日の業務を通じて、近隣説明・立ち退き・遺産分割協議・相続税・マンション管理・修繕計画など、弁護士・税理士・不動産業者・マンション業者と日常的に交わり、未知のことは謙虚に教えを乞い学ばさせていただきました。会社での教育も充実していました。学ぶ機会はいくらでもありました。建築に詳しい上席からはたくさんのことを教えていただきました。
多くの方々のおかげがあって、私の繊維業界で養った営業キャリアは磨きをかけられ深まり、建築業界でのキャリアを培うことができました。建築業界でも私は周りの皆さまに育てていただいたわけです。ありがたいことです。心より感謝しております。
営業成績はいつもいつもいい時ばかりではありませんでしたが、上司・部下にも恵まれて、私は50代半ばに部長に昇進させていただきました。それなりのお給料もいただけるようになり、家族の生活も安定しました。41才で転職した時の苦労を思い出し、今の生活のありがたさが身にしみます。
子どもたちも健やかに成長してくれました。長男は理系の大学を卒業し公務員となり、長女は夢を追いかけ女子サッカーの選手となりました。
57歳の夏。
私は、とある県にある支店の営業部部長として移動を命じられました。自宅からは2時間近くかかる遠距離通勤になりました。正直この年になって朝晩4時間近く通勤に自らの時間を費やすのは辛いものです。
ですが、私は最後の奉公と思い、定年まで勤め上げようと決めました。そして。
・・そして2年の月日が過ぎました。