TwilightSmile

 ~ 定年 another story ~

定年の日まであと50日。Note

昨日、最終出社日を終え、今日から有休に入りました。
5月末日まで長い約50日余りの有給休暇となります。
(一昨日から昨日の最終出社のことを記録しておきます。)

一昨日の午前中、支店に現在当社で建築中のお客様がご夫婦でお見えになり、
定年退職する私に「〇〇さん(私)には大変世話になった」とありがたいお言葉とともに、記念品と大きな花束をいただきました。
お客様のほうからこのようなお気持ちを頂戴するのは請負業者として立場的に心苦しくも感じましたが、本当に感謝しているというお話をいただき、営業マンとして精一杯頑張ってきた自分への天からの褒賞として受け止めて、ありがたく拝受いたしました。
建物の構造規模仕様、事業計画、融資付け、税務面のご相談、建物管理運営、ご要望、ご疑問点をひとつひとつ丁寧に解決して、同業他社との競合の上、当社にご発注いただいたこと、そして無事着工し順調に現在施工が進捗している様子、などを思い出を交えて語らっていただいた上、最後に「お体を気を付けて」と握手をしてくださいました。
ありがとうございまいた。心より感謝御礼申し上げます。

・・

その来客の後。
すでに記入してあった定年退職における書類一式を直属の上司にご確認いただきました。
退職届(社内書類)。
直筆の退職届。
誓約書。
業務引継書。
通勤定期の清算書。
退職所得申告書。etc..
それらの書類は東京の本店総務部へ夕方持参いたします。

昼食後、上席者にご了解を頂いた上、いったん自宅へ立ち寄ることにしました。
というのも午前中お客様よりいただいた花束。とても大きな花束だったんですよね。生まれて初めてこんな大きな花束を抱きました。これを長く持ち歩いて本店に行くのはたいそう難しそうだったからです。
(とは言え片道2時間弱の遠距離通勤の私です。自宅に立ち寄るといってもちょっと立ち寄る、という感じではありません。最寄り駅まで妻に車で来てもらい、駅で手渡ししました。)

・・

夕方、本店へ。
総務部に立ち寄り、総務部長に退職書類一式を手渡し。
総務部長は軽くチェックし、確かにお預かりしました。との言葉の後立ち上がり、深々と頭を下げて「長い間お疲れさまでした」と。
私も深々と頭を下げ「ありがとうございました」と一礼しました。

夕方5時に上席役員のもとへゆき直々に退職金の明細を手渡しいただきました。
その後社長、専務、役員の方々、本部長クラスの方々、と順にご挨拶をさせていただきました。
設計部、見積部、関連会社、など各部も周りました。
みな、本当に優しい言葉をかけてくださり、ありがたく感謝の気持ちでいっぱいになりました。

上席役員から「一杯行こう」とお誘いを頂き、さらにその上の役員と営業本部長、設計部長、見積部課長、6人で飲みにいきました。
一軒二軒とはしごし、翌日が最終出社日というのに、最後は上席役員と営業本部長と3人で夜更けまで延々と飲んでしまいました。
ご馳走になりました。ありがとうございました。

・・

そして昨日朝。
数時間しか睡眠をとれませんでしたが、一番に支店に出勤し、すでにほぼ片づけて整理されている机に座りました。
(今日で終いだな・・)といささかしんみりしながら、みなの出勤を待ちました。
8時過ぎよりひとりふたりと出勤してきました。
私は一人一人出勤する都度、「おはよう」と声をかけました。
8時半前にはいつもとかわらぬ事務所の風景がそこにひろがりました。

明日もこの風景が繰り返されるのでしょう。
でも明日は私はもういないのです。
私は遠いまなざしでその風景を眺め、記憶に留めました。

朝礼が始まり、そして終わりました。
事務の女子社員が9時に出勤し、全員がそろったところで支店長が皆に声をかけました。
私からの挨拶の場を設けてくださったのです。

~私の挨拶~

不覚にも私は少し涙ぐんでしまいました。
41才の時、転職してきた当時私はこの会社に一人として知り合いはいませんでした。
しかし、、今はこうして私の定年の挨拶を聞いてくださる方々がいる。
皆の視線を受け私はこの会社で生きてきた日々がとてもありがたいものと感じ、その感情が涙腺を震わせたのです。

私の挨拶の後、女子社員から記念品と花束、そして支店の一同が寄せ書きしてくださった色紙を手渡しされました。
ああ、なんという幸せな。ありがたいことでしょう。
私は深々と頭をさげ「ありがとうございます、ありがとうございました」というより言葉がありませんでした。

・・

私の挨拶の後、事務所は忙しい日常の業務に戻りました。
私は事務の女性に手伝っていただき、パソコン、携帯電話、名刺、社章、デスク周りにある品々、など会社に返却すべきものを整理しました。
すっかり片づけて。

9時半ごろ私は「ではこれにて失礼します」と一同に声をかけました。
「もういっちゃうんですか」と言いながら全員がまた仕事の手を休めて立ち上がり、エレベーターまで見送ってくれました。支店長や元直属の部下であった数人は一階のビルの正面玄関まで見送りに来てくださりました。一人一人と私は握手をし、最後の別れの挨拶とお礼の言葉をのべました。
「では、また、」と言って私は駅に向かい歩き始めました。
振り返らず、まっすぐに。

駅までの道は冷たい雨が降っていました。
東京では雪が降っているようでした。
とても寒い日。

ですが、私の心中は、爽やかな心持ちでした。

(新しい次の頁が私を待っている。)

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