TwilightSmile

 ~ 定年 another story ~

一道万芸に通ず

私の転職は成功したようです。
入社して3年が過ぎる頃、私はマネージャーに昇格し、営業所の所長になりました。
異業種からの転職者としては異例でした。
私にその昇格を伝えた上司は「サプライズ」だと言っていました。

何故そうなり得たか、私はおぼろげに分かっていました。
私は周りの営業マンとは違っていたからです。
繊維業界・輸入業界・百貨店業界等で学んだ営業所法をそのままに私は建設業界で営業をしました。特にお客様に対するときの私は百貨店売り場でプレタポルテの商品を一対一で接客するのと同じ心持ちで接客させていただきました。

高級婦人服でお客様の信頼を得ている販売員は、お客様一人一人の個性に合わせて商品を選び、お客様が望まれる商品を共に商品を見つめて、共に手に取り、素材を確かめ、試着していただき鏡に映ったお姿に、率直に正直にアドバイスし、判断のお役に立つよう共に考え、迷われた時には背中を押してあげる、言わば「相対」するのではなく「共に同じ方向を見つめる」接客をいたします。
そして「いい商品に出会えてよかった、あなたのおかげよ、ありがとう」、と笑顔になって喜んでもらえることが最高の喜びになります。私は自ら売り場に立って接客する中、そうした基本を身につけていました。
その接客の基本を私は異業種の建設業界でも踏襲し、作為なくそのままに自然に営業していたのです。

「一道万芸に通ず」

建設業界は口先はお客様第一、と言いながら、自分の利ばかり考えている輩が多いのも事実です。ところが、私はそうした並み居る建設業界の飛び込み営業マンと根本的に営業姿勢が違っていました。私は純粋にお客様の立場に立って考る、考えるように出来上がっている、そうした営業マンであったのです。
ですので受注したお客様から「あなたは最初に出会った時から、他の営業さんと何か違って見えたよ」と何度も言われました。

こうした私に育てていただいた繊維業界の諸先輩方にこの場を借りて感謝致します。

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もちろん、勉強しなければ異業種キャリアだけで他業種に通用はしません。
人の倍の努力は当然ありました。
でなければ営業所長など務まりませんものね。